近代名画

2008年1月22日
この季節には珍しき雨である。
天然資源の神の恵みと思えばありがたい。
そういえば今年は水不足を聞かない。
朝の温度は最低6度で、最高14度の昼間の温度の予測である。

敬愛尊敬する使用品に固執するのも意固地とか頑固とか言われようと良いものは確かにいい。
ドイツの筆記具にカルチェのライターで紫煙の行方を追った。
一点豪華主義。
けっしてなりあがりものの代名詞の不動産屋のチャラチャラではない。

本を選ぶ作法しぐさには、表紙で手にとり最後の著者の説明や解説で立ち読み終了。
本を上と下から出来栄えを見る。
これがドンナに薄っぺら本であろうとこれ以上も無いほどの美的な顔を持っている。

砂丘の波紋や枯れ山水の石に寄する波の如き語りかける言霊の声無き声を聞く。
すれ違いの美人を上から足の先まで嘗め回すように見て「ワァ〜美人!」というとセクハラのご時世ゆえ、
放たれたる魂の男の本性、本懐の所動作が本選びでそうさせてるのやも知れない。

雑誌の高級なるCMの標準的尺度さえそのように持ちえている。
カラーグラビアで百科事典が中間で開かれ、べっ甲製の眼鏡が置かれ、
さりげなく万年筆や時計などのCM写真を珠玉のものとする。

世界遺産などがさりげなく使われてるのも経費要ったろうなと貧乏根性から発してのその後の高級感を併せ感じ、それの持つ知的好奇心を感じとる。

本を選ぶに当たり表紙の絵と出来栄えとしたが、こだわり無く選べるのは俗人的なもの。
絵は和田誠と装丁は栃折久美子に尽きる。

古今亭志ん朝師匠がラジオNHK芸術劇場、芸能花舞台の解説を昼間の13〜14時であったかやってたのが著書にまとめられた。
表紙の色で言うなら青い感じである。
鼻をデファルメ化しての一筆描き的線描写の志ん朝師匠が実にいい。
落語的教養に溢れた和田誠の真骨頂。

メガホンを取った「麻生放浪記」のワンシーンは一幅の名画だ。
ガラスに書いてある、ペンキの文字・・マーァジャン・・が夕日に写り
部屋に逆の形の文字で照らし出される・・・

秋の夕日は鎌を研げ!の農耕民族の豊作の豊穣の恵みさえ感じ取らせるお日様の有難さを暮れ行く移り行く時の表現の仕方にを教えられた。
遠まわしの表現にこそ思索を重ねえる思想があることを。

キャメラもレールを敷いての撮影で、近代化された機械技術を一切封印して旧式キャメラ技術にのみで撮った凝った映画である。
居残り佐兵次を下敷きにした「幕末太陽伝」以来の傑作で随所に懐かしきキャメラワークをみることが出来る。

その和田誠にして野上照代との対談で最高の誉め言葉で会話が進むもので当の本人が萎縮なさってるのを読んだ。
「たそがれ清兵衛」のイラストロボを野上が担当したことや、雑誌「キネ旬」
の仕事振りそして「母べえ」の原作のこと。

な〜んだ。映画を見る前の予備知識が充満されていく「母ベえ」である。

昨年中央公論新社から刊した原作は映画と違って手紙ばかりゆえ文章を補うためでの絵を入れた。
ちなみに野上のイラストがふんだんの「天気待ち監督黒沢明とともに」文芸春秋・文庫装丁は和田誠の職人芸を一瞥するがいい。
外国向けもあのままで刊されたらしい。

「母べえ」の原作は「父へのレクイエム」で読売が賞金1000万円で募集した
女性ヒューマンドキュメンタリーの受賞作品がベースである。

「影武者」撮影後のしごとが無く干しあがってたので賞金で救われた。
今度は映画と本当に運がいいと屈託が無い野上。

作品は野上の子供の頃の家族の思い出。
父が治安維持法でしょっぴかれ、太平洋戦争に突入していく時期のお話。
山田洋次監督80本目の作品。

上野は山田監督にフイリッピンで戦死した人の作品の詩やマンガを貸して
説明をしていた。
テレビに取り上げてもらえないか読売の募集に応じたら落選した。
それを監督に話していたら、
まず「父へのレクイエム」を撮ろうという事になった。

詩人竹内浩三は詩人で
骨のうたうで「戦死やあわれ 兵隊の死ぬるやあわれ」と歌った。

ところで何故この野上照代なる人、
「影武者」黒沢さんなど突拍子も無いことも連続なのか。の説明が要る。

伊丹十三を子供の頃から面倒を見ていた人なんである。
伊丹の父たるは伊丹万作監督。
ペーソスをベースにした「赤西蛎太」さらには「国士無双」「気まぐれ冠者」
亡くなったのが1946年で46歳。

伊丹家の人は郷里の松山に帰る予定が十三が京都に残ると頑張った。
東京の伊丹を囲む会の栄田清一郎から助けてくれないかと頼まれ
野上は出版社を辞め京都の伊丹家に行って十三の面倒をみた。

プロデュサーの栄田は大映京都撮影所に野上を入らせ、野上はスクリプターになった。
1950年黒沢明は「羅生門」を撮りに京都に乗り込んでくる。
三本の経験しかないのにラッキーが重なり担当となる。

傾向映画とか陰口にレッテルを貼り戦後もズ〜ツと戦争賛美の軍人気質の残ってる文化的状況がこの国にはある。
いわく「アカ」の映画はみてはいけない。

今世界の目はイランに注がれている。
一触即発状態でブッシュは何度となく挑発している。

人間の本質は戦争に対する姿勢イカンで評価されえてるのかもしれない。
とりわけ男女の絆の基本たる愛はギリギリの極限でも繋ぎとめえるまでに昇華するものゆえ美しい。

名画に散りばめられてる背景描写には生死を賭けた
男女の織り成すドラマがあればこそ名画になる。

バーグマンの映画だけでもきりがない。
ドイツ支配のすすむ欧州状況下のひと時自由の街カサブランカでの出会いと別れ、
真実の男の愛のボガードと演じる「カサブランカ」。テーマは愛と勇気と戦争と平和と多岐にわたる。
、ヘミングウエィの原作でスペイン内戦の義勇軍を描いた「誰がために鐘は鳴る」

笑いとペーソスがモチーフたるチャップリンでさえサイレント以前時代の「街の灯」
「独裁者」での演説は妻たるハンナの名で終わる演説でさえある。

そのことを忘れるほどの反ナチ=同年代のヒトラー憎悪ゆえ、モチーフさえ薄らいでるほどの衝撃性さえある。

「戦争と人間」での軍隊の中での梶の生き様は愛の強さを知ると共に責任感の重さ純粋恋愛の尊さに凛とした。
高校生のときに全編を徹夜で観ての登校であった。

同伴者への幸せなる人生への責任感で重荷となったんであろうか屈折した純愛の異性感。
主題の重さが愛や異性感を曲げえたのやも知れない。、

皇太子が「全力をあげて守り抜きます」の世間に対してのメッセージたる愛の告白には
自分のことのように照れて活字を恥ずかしくおったものだ。

「戦争と平和」は全編カラーの画面ゆえ悲惨さも目に悪い衝撃度。
「忍ぶ川」でのモノクロにしての栗原小巻加藤剛のおりなす彩をなしたのが理解できる。

心の中の出来事は白黒のほうがかえって異和感は無い。
また、純粋な愛の映画はどうやら一人で見るものである。

男と女が互いに愛しむ姿はセックスシーンや容姿の美しさを撮ることではない。
わが身を処する崇高さに感動があり真の愛を感じ取るからだ。

どうなんであろう。
生命を宿す肉体を所持するものにはその精神性はウエート的に薄いのやも知れない。
妖艶さが招く女の神秘性から計り知れぬ女心の謎は永久である。

ただ一〇月一○日に渡り世間に向けても大きなお腹を傷めるDNAの受け継ぐ側こそ相当真剣なのかもしれない。
人間以外の動物の生命の受け継ぎからは全く感じ得ないことではあるが
獣の如き行為と厳しく断罪されるのはそこにあるのであろうか。

出来ちゃった婚などと婚前妊娠が社会の流れの中では言葉を知らない世代でもある。

ただ祭りの夜の自由なる性や床入れ婚などの風習がなにも原始的とか汚いとかは思わない
長く生きるもののその当時の生活状況が無したる共に白髪の生えるまでの生活者の知識であったのかもしれない。

弱肉強食はツイこの前の敗戦後の貧乏なる原始的社会には蔓延っていた社会現象であったからである。
からゆきさんや従軍慰安婦問題は目を伏せてすむ問題ではない。

イランが世界の良心から注目を浴びている。
アボルファズル・ジャリリ監督がイラン人の生き様を胸に染み入る純愛の形で示した。
これに日本の若き才能、良識溢れる俳優が手を貸した。

「ハーフェズ・ペルシャの詩」
ハーフェズとはイスラムの聖典であるコーランを美しき声で朗読する人のことである。

誰からも敬われるハーフェズには容易にはなれない。
それだけの社会的地位がある。
コーランを総て暗誦する試験にパスする必要がある。

メヒディ・モラディの扮するこの人は幼き頃からの修業が実りこの称号を得る。
対立する宗教者の娘・麻生久美子の扮するナパートにコーランを教えることを命じられる。
チベット育ちゆえコーランの知識が無いゆえだ。

結婚前の娘と顔をあわせるのは禁じられてるので壁越しのコーラン読み上げとなる。
ナント意味深いことか。
どんな凡人も、この宗派の聖地、嘆きの壁さえ連想追想させる。

詩句の意味を知りたがる、壁越しの顔や姿を見れないながら答え学ぶ二人
言葉の往還
説明するため思わず禁断の詩を読む

「君をなにに例えたらよいのだろう。
          形あるものとは違う
  「君は命なのだ。」

いききしてる言葉が染み入る。
・・・・恋に陥る。

家政婦に密告され称号を剥奪され煉瓦職人に身を落とす。
父親の決めた同じ名の宗教者の相手と婚礼をかわし原因不明の病気になる。

イランの大地に展開されていくのはここからである。
旅を始める。
本当探しである。

「言葉に宿る力は自然界にあるのです。」
まるで日本でいう言霊ではないか。

麻生久美子がイスラム文化との狭間で名演技をしている。
ハリウッドで無くジャリリ監督が海外進出の初作品とは鋼鉄の意志の大和なでしこ。

米国こそが総てのステップアップの風潮の中での選択は称えられよう。
イラン人になりきりは本当のグローバリズムの体現者。

核関連施設のみで報じられる彼の国は如何に豊かで高い文化を保持して生きてるのかを教えてくれる
イラン理解の時節にマッチした作品。
それがどうしたものか
イラン国内での上映は宗教的からか許可されていないらしい。
ううん〜〜何たる悲劇。

一貫してのモチーフはギリシャ神話の悲劇であり、壮大なる仕掛けのシェークスピア劇の構成である。
宗教の国とはいえ武士道の通じた生き方論を矜持するものから見れば
人間の普遍性をみる思いで、異和感はない。

みるべき映画が多すぎるが時間が全くない。
どうすれば余分に入り込ませることが出来ようか。
1時間38分。
1月19日から全国で順次公開
唯今・東京都写真美術館ホール03−3280−0098で上映中。

「母ベえ」「ハーフェズ・ペルシャの詩」
民族を知り自分を知る絶賛の推薦映画。

おじ様向け映画情報
 来月16日公開の映画「病葉流れて」
モデル出身で、バラエティー番組などの人気者だった吉野紗香(25)が注目.
小柳ルミ子の白蛇妙みたい。
バストがあらわな美肌を全開にしているという。
白川道原作のハードボイルド小説が原作。
吉野が学生を押し倒す濡れ場は圧巻だという

イスラム圏を無視して世界は語れない。
原油なくして地球での生活はありえない。
神の下知したる石油類の管理者でもある。

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